その罪が、いまになって
現実を、夢を侵蝕してゆく。
亡者たちが〈恐怖〉と〈悪意〉に分かれ争う羅刹の国の夢を共有する少女と少年の魂の行方
並ぶ者なき幻視者が
若き日にものした幻の傑作、初単行本化!
叔父を殺したことは固く秘しておくべきだった。自殺するなんてと母が泣き続けるものだから、本当はわたしが崖から突き落としたのだとわかれば、すこしは気が楽になるかと思ったのだ。震災で妻を失いPTSDに苦しむ叔父との同居に疲弊する家族のために、小学六年生の左右田理恵(そうだりえ)は叔父を殺した。その四年後、理恵は奇妙な夢を見るようになる。荒れ果てた灼熱の地で岩蔭と食糧を求める「鬼」の集団。かれらは二つの勢力に分かたれ争い殺し合う――その法則を理恵に教えたのは、同じ夢を共有する一人の少年だった。鬼才の幻視文学の頂点となる幻の傑作、初単行本化。
【目次】
羅刹国通信
続羅刹国報
続々羅刹国――雨の章――
続々羅刹国――夜の章――
解説=春日武彦
津原国通信=北原尚彦
1964年、広島県生まれ。青山学院大学卒。89年、