本書ではこの問題を基本に戻って考察する。まず、日米の資料が最もよく揃っている山本長官機撃墜事件を使って論点を整理し、次いで、米国の機密解除資料を用いて戦略暗号を分析する。分析の結果は、構造上の問題が戦略暗号にあったことを示す。暗号強度は暗号書を適宜更新して保つが、この問題のために暗号書の寿命は海軍関係者が想定したより短かった。いいかえると、暗号書の鹵獲あるいは暗号書の不適切使用がなくとも正攻法で解読され得た。
実際の作戦電報が解読されたか否かは、使用暗号書の寿命内か否かの問題になる。これを、長官機撃墜事件の他、主要海戦(珊瑚海、ミッドウェー、マリアナ沖、レイテ沖)、輸送戦(ガダルカナル、キスカ)、初期と末期の戦い(真珠湾、沖縄)で検討する。このほか、陸海軍の協同作戦時の暗号、暗号書事故をまとめる。
1950年生。1973年東北大理学部物理学科卒、