テルレスの青春

1966年 • 87分
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この映画について

原作は、ヒトラー政権下で焚書処分を受けた、ロベルト・ムージルの『若いテルレスの惑い』。思春期の少年の欲望を赤裸々につづり、ヴィスコンティも映画化を企画したという。寄宿学校にただよう同性愛的雰囲気と、その閉鎖社会ゆえのサディズムが、ナチスにはまるで鏡のように映ったのだろう。"作家は処女作に向かって成熟する"というのが、本作の宣伝コピーだったが、まさに然り。この処女作は、シュレンドルフの以後のどの作品にもない輝きがある。金を盗んだ仲間を徹底的に苛め抜く二人の同級生。それをただ傍観する主人公テルレスの冷酷さ。この構図はそのまま、ユダヤ虐殺を見て見ぬフリをしたドイツ人のエゴイズムに重なる。シュレンドルフの張りつめた演出と、繊細な映像感覚はむしろ、製作者の一人であるL・マルのタッチを思わせる。ただ、苛められる少年が原作の設定と違い、まるで不細工で、ヴィスコンティ的な官能を求めると腰くだけとなる。その部分が、この監督の限界なのかもしれない。66年のカンヌで国際批評家賞を受賞。