貴方なしでは

1939年 • 93分
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この映画について

魅力的なキャストなのに、あまり印象に残らないのは脚本の安直さに起因する。女流作家(R・フランケン)の原作らしいウィットを感じさせる部分もあるが、膨らみに欠ける前半から唐突にメロドラマっぽくなるあたり、いかにも説得力を欠く。NY市民740万余のうち最も重要でない人物--と電話帳がめくれて示すジョン・メースンは弁護士として老舗事務所に籍を置くが、人のいいのが災いして昇進の機会を逸し、新妻と母と貧乏暮らし(と言っても家政婦の首のすげ替えばかりしている悠長さだが)。そのうち息子も生まれて束の間の幸福を味わうが、借財を抱えての年越しと姑の悪口に妻はプッツン、夫も怒って外出、二人してヤケ酒をあおるパーティ。が、その最中に息子は肺炎に罹り、治すには特殊ワクチンが必要で、それは遠方のユタ州にある。輸送費用に大金がかかるが、意を決して上司に金の工面を頼むと快く引き受けてくれ、飛行便は向かうが......。後半のそのサスペンスに監督クロムウェル本来の力量が窺われるが、全体の雰囲気と水と油なのだ。