Koto

2016
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Über diesen Film

今朝もいつものように店の前に水をまき、夫の竜助に丁寧にお茶を淹れ、仏壇に手を合わせる佐田千重子。京都室町に先祖代々続く佐田呉服店を継いで20年、同じ暮らしを守り続けてきた。しかし、周囲は変わりつつあった。西陣を歩いても機の音が聞こえなくなり、古くからの付き合いの職人たちが次々と廃業していく。千重子の一人娘で大学生の舞は、一流商社の二次面接を控えていた。就活がうまくいかない友人たちから「最後は家を継ぐんやろ?」と聞かれて、言葉を濁す舞。本当は何をしたいのか、見つけられないでいるのだ。千重子には、生き別れになった双子の妹がいた。彼女の名は中田苗子、京都のはずれの北山杉の里で夫と林業を営んでいる。一人娘の結衣は、絵画を勉強するためパリに留学していたが、やはり本当は何を描きたいのかを見失い、悩める日々を送っていた。竜助と千重子は、舞に広い世界で社会を学ばせた後、店を継いでもらおうと考えていた。そのため、町家を売ってマンションにしないかという不動産会社の誘いも断ってきた。だが、経営は思わしくなく、外国人観光客相手の町家ツアーを企画したり、竜助の実家で今は多角経営を進める大問屋を手伝ったりしている。舞と養母の墓に参り、ふと舞と同じ年の頃の自分を思い出す千重子。実の子供ではない自分を温かく育ててくれた両親が喜ぶことだけを望み、店を継ぐのは当然のことと思っていたが、それだけではない。「この町で育ったいうことは、宿命みたいなもんがある気がしてな」と語る母に、舞は顔を曇らせる。迷う気持ちを抱えたまま面接を受けた舞は、「この会社で成し遂げたいことはありますか」と聞かれて何も答えられない。それを知った千重子は、昔からの付き合いの商社の重役に贈り物を届け、竜助の父の水木に口をきいてもらうよう頼み込む。 内定通知を見て母の根回しに気付き、勝手に辞退する舞。「お母さんが気にしてるのは、この佐田の家の顔やろ」と千重子に言い捨て飛び出した舞は、祖父の家へと駆けこむ。祖父は一言、「無理に継がんでもええんちゃうか」と微笑んでくれる。その頃、千重子は思うように生きればいいと言ってくれた養母の優しさに想いを馳せていた。舞が書道の先生からパリで開く個展への同行を頼まれたと知った竜助は、外に出なければわからないものがあるとからと舞の背中を押す。竜助も若い頃、大問屋を継ぐのがいやでアメリカに留学したのだった。それから数日後の夜、パリと京都で母から娘に北山杉の模様が織り込まれた帯が渡される。パリでは、心配した苗子が結衣のもとを訪れ、帯にまつわる千重子との思い出を語っていた。一方、京都では千重子が、パリで日本舞踊を披露する舞に大切な帯を託す。もう一つの古都パリに到着する舞。母から日本の心を受け継いだ娘たちの人生が今、交差しようとしていた─。 Rating G (c)川端康成記念會/古都プロジェクト