自助論〜新訳完全版〜第十章

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· パンローリング
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天は自ら助くる者を助く

本オーディオブックは、1858年にイギリスで上梓された『自助論』の改訂版を現代語にて全文を完全新訳し、朗読したものである。

人は成功を命ずることはできない。努力してこそ、成功を手にすることができるのだ

前書は、アメリカで出版されたのを始め、イギリス国内はもちろん世界各国にて翻訳され、今尚、読み継がれるロングセラー書。
日本国内では、中村正直が翻訳『西国立志編』として刊行。明治の終わりまでに100万部以上の売上をあげた。

本オーディオブックは、全十三章からなる「自助論」の第十章

本書の主旨は、みなさんが正しい目的に向かって力いっぱい努力すること—、苦労や苦しみ、屈辱から逃れることも、他者からの支援や保護に頼りきることもなく、自分自身で活路を切り開けるように導くことだ。自分自身を助けることは、突き詰めて考えれば、周囲の人を助けることにつながる。
本書で取り上げたさまざまな実例——文学者や科学者、芸術家、発明家、教育家、慈善家、宣教師、殉教者たちの生き様—を見れば、それが分かるはずである。

優れた人物が、自らの理想を追求するなかで失敗することはもちろんある。しかし、失敗しようと思って失敗したわけでもなければ、失敗してよかったと考えているわけでもない。よからぬことを追求して成功するのは恥ずべきことだが、理想を追求して失敗するのは名誉なことである。
しかし、理想を追求して成功するほうがそれよりもっといい。

どんな場合でも一番大事なのは結果ではなく、その目的であり、価値ある目的の実現に向けて注ぐ努力と忍耐、勇気、不屈の闘志である。

目次

第10章 金—生かすも殺すも使い方しだい MONEY—ITS USE AND ABUSE

●金というレンズを通して見える人間性
●倹約のススメ
●分不相応な生活
●誘惑という天敵
●働く者恥じるべからず
●生活のための蓄財か金銭欲からの金儲けか
●最大の資産よりも最高の人格を目指す

〜本文より抜粋〜

「暮らしを楽にしようと思ったら、品性を落としてまで少しばかり金儲けするよりも、少しばかり貯金するほうが利口である」
———ベーコン

「世のなかには常に、2種類の人間が存在する。金を貯める人と金を使う人—すなわち倹約家と浪費家だ。家や工場、橋や船の建設など、生活を向上させ、人びとを幸せにする偉大な仕事はすべて、金を貯める人、つまり倹約家が行なってきた。一方、自分の金を粗末にし浪費する人は、常に倹約家のしもべに甘んじてきた。それが自然の摂理であり、神の御心なのだ。将来に備えず、何も考えず、怠けていてもうまくいく、などと私には言えない。そんなことを口にすれば、私はとんだ嘘つきになってしまう」
———コブデン(政治家・経済学者)

金をどう扱うか—どのように稼ぎ、どのように貯め、どのように使うか—は、その人物が生きるための知恵をきちんと持ってているかどうかを知る最も良い方法のひとつだ。金を人生最大の目的と考えるのは、もちろんよくない。だが、金が物質的な豊かさや社会の繁栄に大きく役立っているのも事実であり、「金など重要ではない」などと聖人ぶって軽蔑するのも間違っている。重要でないどころか、人間の優れた資質のいくつかは、金を正しく使うことと密接な関係を持っているのだ。寛大さ、誠実さ、公正さ、自己犠牲の精神などもそうだし、倹約する心や将来への配慮といった現実的な美徳もそうだ。

手段さえ間違わなければ、生活の快適さを追い求めるのは悪いことではない。物質的に充足することは人間性の向上に必要であり、それによって家族を養っていくこともできる。

快適な生活を得るために努力することは、それ自体がひとつの教育である。自分を誇りに思う気持ちを起こさせ、実務能力を引き出し、忍耐強く努力するといった美徳を養ってくれる。先を見通して用心深く心を配る人は、思慮深い人である。今現在を生きるだけでなく、将来を見越してそれに備えているのだから。そのような人は、節度をわきまえた克己心のある人でもある。

ビジネスにおいて陥りがちな最大の落とし穴は、商売のことだけを考える人間になってしまうことである。そうなると、型にはまった価値判断から抜け出られなくなる。周りの人間が、自分の金儲けの道具にしか見えなくなる。そんな人間から金儲けを奪ってしまえば、後には何も残らない。
蓄財によって得られる世俗的な成功は、たしかに目もくらむほど魅力的だ。多くの人が程度の差はあれ、世俗的な成功に憧れるのは自然なことでもある。目端がきいて我慢強く器用で、おまけに少しばかり鈍感な人間なら、チャンスをうまく利用することによって、世俗的な成功を収めることは難しくない。しかし、成功した人間が必ずしも人格的に優れていたり、善良な人だとは限らない。金儲け以外に行動原理を持たない人間は、金持ちになることはできたとしても、とてもみじめで哀れな存在だ。裕福だからといって、その人間が道徳的にも立派だとは言えない。ツチボタルが自分の出す光によって醜い姿を照らし出すように、きらびやかな富がその所有者の下劣さを浮き立たせるだけの結果になることも多い。

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