親代々の同心で微禄(びろく)ながらもとちゃきちゃきのお家がらであった近藤右門は、普段から滅多に言葉を話さないため「むっつり右門」と呼ばれている。 昨年親の跡目を継いだのだが「むっつり右門」のためなかなか出番に恵まないでいた。と、島原の乱が鎮圧された直後の花見で浮かれる江戸で余興の舞台上での殺人事件が、時を同じくして富くじ賞金三百両窃盗事件がおきた。 いずれも不思議な術で眠らされての出来事と知って、むっつり右門の血が騒ぐ・・! 佐々木味津三・・若い人にはあまり名前の通った作家ではないかもしれませんが、代表作の『右門捕物帖』は嵐寛寿郎、『旗本退屈男』が市川右太衛門で映画化され人気を博した、時代小説の名手です。 一番手柄、どうぞお楽しみください。(C)アイ文庫