天井と、底と、三方の壁とが厚い板でできていて、正面だけが網になっている鳥かご、それが鳥箱先生です。 鳥箱先生は、自分のところに来たひよどりに教育をすることで、自分を「先生」だと思い込んでいましたが、実際は自分を先生と呼ばせて喜んでいるだけでした。 ある時、鳥箱先生のところへ「フゥ」というねずみが教わりに来ることになりました。ところがフゥねずみは鳥箱先生の言うことを聞こうとせず……。 教育をする側、教育をされる側、そのどちらにも批判と教訓を与える、宮沢賢治の社会に対する鋭い観察眼が垣間見える一作。 宮沢賢治作品を読み続ける渡部龍朗が、またまた皮肉なおかしさあふれる作品を選びました。自身の教育への思いもこもった、ユーモアあふれる一編になっています。(C)アイ文庫