死んで、
それだけなんだ。
犯罪と暴力の渦中に佇む人々の息遣いを美しく描き出す10編。
O・ヘンリー賞受賞作収録
自分を救ってくれた兄に付き従ううち、いつしか銀行強盗に加担することになった西部の少女。ろくでなしの父親を探すため、拳銃を隠し持ってヒッチハイクをくり返す女性。ぶかぶかの袖口で鼻血をぬぐい、裸足で列車を待つ少年。根拠薄弱な治療の果てに母親が病死し、医者に苛烈な復讐心を抱くようになった双子の妹――。時を選ばず、突如として眼前に現れる犯罪と暴力。その無秩序に翻弄され、血まみれになりながらも生きてゆく人々の息遣いが、気高く、美しく描き出される。O・ヘンリー賞受賞作を含む10編収録、凄絶な迫力を放つ傑作短編集!
【目次】
よくある西部の物語
アデラ
思いがけない出来事
外交官の娘
オリンダ・トマスの人生における非凡な出来事の奇妙な記録
ジェイムズ三世
蜻蛉(スネーク・ドクターズ)
死を悼む人々
認識
われらはみなおなじ囲いのなかの羊、あるいは、何世紀ものうち最も腐敗した世界(オ・セキュラム・コラプティシマム)
謝辞
訳者あとがき
解説=杉江松恋
カリブ海東部のアンティグア・バーブーダにルーツを持つ作家。
青山学院大学文学部卒業、