哲学という分野は一般的に〝何だかわけの分からないもの〟と
認識されているようですが、その理由はどこにあるのでしょうか?
哲学を学ぶなら哲学史から……という姿勢は、
基礎から積み上げることを重視する日本人的な発想です。
哲学が〝わけの分からない学問〟から脱却するためには、
もっと分かりやすく〝面白い部分〟を提示してあげることが必要です。
本著は、忍耐力をもって基礎から積み上げる……という日本的発想を離れ、
〝なるべく面白い部分だけを畳みかけるように解説する〟という姿勢を重視しました。
哲学に興味を持った方の意欲を萎えさせる可能性の高い古代と中世は最低限に留め、
面白いところを効率的につまみ食いできるよう配慮しています。
もちろん、近世以降のデカルト、カント、ニーチェなど
哲学に興味を持った人なら誰もが知っている有名哲学者はしっかりと押さえました。
退屈せず、面白い部分だけを経由できる〝哲学の観光ガイド〟になっているはずです。
初出の専門用語には必ず説明をつけていますから、特に予備知識は必要ありません。
正確な勉強は、哲学の何たるかを理解して、より強い興味が湧いてからで十分でしょう。
努力や忍耐は後回しにして、まずは哲学の面白さに触れてください。
[目次]
第1章 古代から中世を駆け抜ける
壮大かつ深淵な哲学史の幕が開く!
相対主義を唱えた古代の哲人――プロタゴラス
~人間は万物の尺度(Homo mensura Satz)
行き過ぎた相対主義に一石を投じた――ソクラテス
~無知の知(das Wissen des Nichtwissens)
絶対的真理の定義に挑戦――プラトン
~イデア論(idea)
哲学と諸学問の創始者――アリストテレス
~哲学とは、知を愛すること(philosophia)
古代の哲学体系を実践に活かす!
~〝哲学を知る〟から〝哲学する〟への跳躍
暗黒時代――中世を秒速で駆け抜ける!
~哲学不遇ふぐうの時代、そして宗教と哲学の違いは……
第2章 ルネサンスを経て、近世に突入!
人間の理性に再び火が灯った……!
あらゆる事物を疑い尽くした懐疑論者――デカルト
~我思う、ゆえに我在り(Cogito ergo sum)
法則(ロゴス)を神と呼ぶならば……! ――スピノザ
~神即自然(deus sive natura)
帰納法を生み出した賢者――ベーコン
~知識は力なり(Scientia est potentia)
帰納の限界に到達した懐疑主義者――ヒューム
~知覚の束あるいは集合(a bundle or collection of different perceptions)
第3章 近代の到来と、哲学の隆盛
人類の逆襲――神から世界を奪還せよ!
理性が扱える範囲を見極めた人物――カント
~何を知ることができるか?(Was kann ich wissen?)
歴史は最終形態へたどり着き、完成する――ヘーゲル
~自己外化&弁証法(Selbstveraeusserung und Dialectik)
第4章 不安と絶望に囲まれた時代――現代の哲学
20世紀のキーワードは〝実存〟である!
人類一般に埋もれた〝私自身〟の発見者――キルケゴール
~死に至る病(Sygdommen til Doeden)
流転する世界の中で、今よりもっと強くなれ……! ――ニーチェ
~力への意志(Der Wille zur Macht)
実存主義を世界に広めたアジテーター――サルトル
~実存は本質に先立つ(l'existence precede l'essence)
第5章 実存主義時代の諸哲学を知る!
現象学、分析哲学を雑学的にレクチャー
疑いようのない世界はどこにあるのか――フッサール
~事象そのものへ(Zu den Sachen selbst)
近代哲学の墓標を立てた〝墓堀人〟――ウィトゲンシュタイン
~思想とは意義を持つ命題である(Der Gedanke ist der sinnvolle Satz.)
第6章 多様性の受容と、イデオロギーの解体
信じるものなきポストモダンへ……!
言語構造の中に、哲学的諸問題の答を視た――ソシュール
~シニフィアン&シニフィエ(signifiant et signifie)
現代思想としての構造主義を確立――レヴィ=ストロース
~構造人類学(La pensee sauvage)