レイラは苦々しい思いでカフェを訪れた客に目をやった。
この町出身の敏腕実業家、ドレイク・アシュトン。
冷徹で自信家の大富豪で、彼女がもっとも遠ざけたいタイプだ。
というのも、ロンドンでの秘書時代、彼のような男性に騙されて
苦労して貯めたお金をすっかり失ったことがあるからだ。
以来レイラは故郷へ戻り、兄の店でウエイトレスをしているが
経営はうまくいっておらず、いつも苦労が絶えない。
町を再開発するという彼は、この店にも投資するつもりかしら?
兄を救いたいという切なる思いが無意識に働いて、
レイラは気づけば、彼のディナーの誘いにイエスと答えていた。