トカトントン、というのは金槌の音です。
「何か物事に感激し、奮い立とうとすると、どこからとも無く、
幽かにトカトントンとあの金槌の音が聞えて来て、とたんに私はきょろりとなり、
眼前の風景がまるでもう一変してしまって、映写がふっと中絶して
あとにはただ純白のスクリンだけが残り、それをまじまじと眺めているような、
何ともはかない、ばからしい気持になるのです…」
主人公の青年はその悩みを書簡という形で某作家に打ち明けます。
そして最後にその作家は彼に返信をし助言を与えます。
幻聴に苦しむ主人公に救いのこたえは与えられるのか?
太宰治の短編小説であり、幻聴に悩まされる男の悲喜劇が描かれています。
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津軽の大地主の六男として生まれる。共産主義運動から脱落して遺書のつもりで書いた第一創作集のタイトルは「晩年」(昭和11年)という。この時、太宰は27歳だった。その後太平洋戦争に向う時期から戦争末期までの困難な間も妥協を許さない創作活動を続けた数少ない作家の一人である。戦後「斜陽」(昭和22年)は大きな反響を呼び、若い読者をひきつけた。