探偵たちと切り裂きジャックの世紀
生者と死者が交流する大都市(メトロポリス)の
ヴィクトリアン・ゴースト・ストーリー13篇
12篇本邦初訳
19世紀ヴィクトリア朝、文化・産業ともに飛躍を遂げた大都市ロンドン。その栄華の陰では、犯罪のもたらす恐怖、そして超自然がもたらす恐怖が蔓延していた――晴れ渡ったケンジントン・ガーデンズの一角で目に見えぬ何かと交信する、美しき寡婦を巡る愛憎劇を主軸とした出色のサスペンス「ザント夫人と幽霊」。アイルランドのバンシー伝説を背景に、野心家の外科医が運命の奇蹟に遭遇する「ハートフォード・オドンネルの凶兆」。周囲から憧憬を集めた愛らしい令嬢が、死に際に抱いた最後の願いを描く「揺らめく裳裾」ほか、魔都ロンドンを舞台に贈る様々な趣向のゴースト・ストーリー13篇を収録する。集中12篇が本邦初訳。
【目次】
ザント夫人と幽霊 ウィルキー・コリンズ
C―ストリートの旅籠(はたご) ダイナ・マリア・クレイク
ウェラム・スクエア十一番地 エドワード・マーシー
シャーロット・クレイの幽霊 フローレンス・マリヤット
ハートフォード・オドンネルの凶兆 シャーロット・リデル
ファージング館の出来事 トマス・ウィルキンソン・スペイト
降霊会の部屋にて レティス・ガルブレイス
黒檀の額縁 イーディス・ネズビット
事実を、事実のすべてを、なによりも事実を ローダ・ブロートン
女優の最後の舞台 メアリ・エリザベス・ブラッドン
揺らめく裳裾(もすそ) メアリ・ルイーザ・モールズワース
隣牀(りんしよう)の患者 ルイーザ・ボールドウィン
令嬢キティー ウォルター・ベサント、ジェイムズ・ライス
編者あとがき――魔の都(みやこ)、霊の市(まち) 夏来健次
1954年新潟県生まれ。主な訳書にスティーヴンスン『