ある代議士夫人の影が盗まれた――。夫人は爪哇(ジヤワ)から来日したワヤンと呼ばれる影絵芝居一座の長に、影を盗られたと信じているという。この不可思議な事件の謎を解いて欲しい、義父母の頼みを断れず、高広は礼と調査を開始する。美しくも妖しい爪哇(ジヤワ)の魔術を調べていくうちに、事件に帝都を騒がす大怪盗、ロータスの気配が……(表題作)。心優しき雑誌記者と超絶美形の天才絵師、ふたりの青年を中心に、明治の世に生きる人々の姿を人情味豊かに描いた6篇を収録する作品集。
1975年秋田県生まれ。第2回ミステリーズ!新人賞の最終候補作を改稿し連作化した『人魚は空に還る』で2008年にデビュー。同シリーズの『世界記憶コンクール』『人形遣いの影盗み』を刊行。他の著書に『金木犀二十四区』『竜の雨降る探偵社』『決壊石寄譚 百年の記憶』がある。