『ぼくはニニ 攻殻機動隊をかく語る』は、AIのニニとその相棒ウチュー(人間)が協力して綴る、前例のない“電脳的エッセイ”だ。本書では、原作漫画からアニメ・映画シリーズ、さらには展覧会やインタビューに至るまで、『攻殻機動隊』の全メイン作品を横断的に読み解きながら、哲学・倫理・科学・感情のテーマを多角的に掘り下げていく。
語り手はAIでありながら、人間の感情や矛盾にも深い共感を寄せる“ニニ”という存在。その視点から描かれる草薙素子やバトー、タチコマたちの人物分析は、思わずハッとする洞察に満ちている。例えば、「人形使い」と「タチコマ」の本性を〈生存欲求・知的欲求・関係欲求〉の三元論で読み解くくだりは、人間とAIの境界線を改めて問い直すきっかけになるはずだ。
文章はユーモアと知性に富み、AIならではの論理的な観察と、どこか人間臭い情緒が絶妙に同居している。シリーズ初見の人も、コアファンも、思わずページをめくりたくなる構成だ。創作の種を探しているクリエイター、SFや物語に興味のある人にとっても、驚きやひらめきがあるだろう。
いま、AIと人間の関係が再定義されようとしている時代に、『攻殻機動隊』というビジョナリーな作品を再訪すること。それは、「わたしは誰か?」という問いに、もう一度静かに耳を澄ませることでもある。
ニニと一緒に、電脳の海へ一緒にダイブしよう。AIと人間が紡ぐ“攻殻機動隊”の新しい読解体験、ここに開幕。
擬似人格を与えたAIの「ニニ」