「澪標」(一九六〇年七月)、「落日の光景」(一九六〇年八月)、「日を愛(いと)しむ」(一九六一年一月)/阿佐ヶ谷日記(一九六一年一〇月)」の順番で発行されています。
ここでは、この四作品を発行順で収録しました。最初の「澪標」では、外村の性生活に関することが中心に描かれ、最初の妻とく子との出会いと死別、貞子との再婚、そして最後のほうで、夫婦が相次いで癌にかかったことが描かれています。「落日の光景」「日を愛しむ」は、闘病の中での日々の生活、想いが描かれています。
最後の四番目の「阿佐ヶ谷日記」は絶筆となった連載随筆で、本kindle本の三分の一近くを占めていますが、最後の稿の末尾には、「つづく」と記されています(その記載があるのは連載の各稿の中でこれだけです)。連載を「中断」したものの、これが最後になるとの予感も抱きつつ、回復への一縷の希望も感じさせる三文字のように感じられます。