楽園に一番近いはずの船のなかで、
一体なにが起きていたのか。
言葉によって現実を作り変える
いま最も注目される作家、
川野芽生の初小説集
純粋無垢な七十七人の少年たちと七人の大人たちは、空をゆく船に乗り、はるか彼方にあるらしい楽園を目指して旅をしていた。ある時、ひとりの少年が船から墜落する。不幸な事故と思われたが、親友の矢車菊には気がかりなことがあった(「無垢なる花たちのためのユートピア」)。人間が人形へと変化する病が流行した村で、ひとり人間の姿で救出された少女は、司祭のもとで看病される。しかし怪我が癒えた少女はだんだんと人形に近づいていくようだった(「人形街」)。歌人、小説家、評論家として活躍する幻想文学の新旗手・川野芽生の初作品集。
【目次】
無垢なる花たちのためのユートピア
白昼夢通信
人形街
最果ての実り
いつか明ける夜を
卒業の終わり
解説=石井千湖
1991年神奈川県生まれ。東京大学大学院単位取得満期退学。