ミステリの技巧を凝らした第16回泉鏡花文学賞受賞作
生誕90年記念出版第2弾
友禅差しの模様師が芸者と恋に落ちる。しかし彼女は新内語りの師匠と、殺人事件に巻き込まれたことがあり……「忍火山恋唄」
縫箔の職人が、自分の名前を騙る人物が温泉宿に宿泊し、デパートの館内放送で呼び出されていたことを知り……「折鶴」
――本格ミステリの構成が光る傑作4編
新内節を語れる友禅差しの模様師・脇田は、旅先で三味線弾きの芸者・彩子と出会う。脇田は彼女に惹かれるが、彩子と、酒と女で身を持ちくずした彼女の師匠の名新内語りが、以前ある殺人事件に巻き込まれたことを知る、「忍火山恋唄」。縫箔の職人・田毎は、自分の名前を騙る人物が温泉宿に宿泊し、デパートの館内放送で呼び出されるという奇妙な出来事に見舞われていた。そんな折、パーティで元恋人の鶴子と再会した時の出来事を思い出し……。ふたりの再会が悲劇に繋がる「折鶴」など全4編。ミステリの技巧を凝らした第16回泉鏡花文学賞受賞作。
【目次】
忍火山恋唄
駈落
角館にて
折鶴
解説=末國善己
1933年東京生まれ。奇術師として69年に石田天海賞を受賞。