最後の１分

エレナー・アップデール

2014 aza. · 東京創元社

Liburu elektroniko honi buruz

爆発60秒前、人々は待ち受ける運命をまだ知らない――クリスマスを前ににぎわう町。ごく普通の人々の喜びが、希望が、日常が、そこにはあった。

わずか60秒のなかに、いったいいくつの人生が込められているのだろう……。クリスマス前のある日、ヒースウィックの町で複数の爆発事故が同時に起きた。未曾有の大惨事。だが事故の因果関係は半年が経っても明らかにされていない……。クリスマスに娘が会いに来るのを楽しみにしている老人、一世一代の大葬儀を前にした葬儀屋の主、次期選挙を控えた不倫中の政治家、就職の面接を目前にした冴えない若者、校外学習に向かういたずらっ子を満載したバス、だれかれかまわず話しかけて漫談を聞かせる物乞い……。１章が１秒という短い章のなかに、登場人物たちの人生のひとコマを凝縮し、見事に描いた異色の傑作。 

Egileari buruz

【エレナー・アップデール】

1953年、南ロンドンのカンバーウェルで生まれる。オックスフォード大学を卒業後ＢＢＣに入り、テレビとラジオの番組製作に携わる。子育てのために退職。以来さまざまな仕事に関わりながら、小説を書き始める。デビューはヴィクトリア朝を舞台に元犯罪者がスパイになるという〈モンモランシー・シリーズ〉。

【杉田七重】

東京都生まれ。東京学芸大学卒。主な訳書にウィルス『二番目のフローラ』『ほんとうのフローラ』『怒りのフローラ』（東京創元社）、カーソン『炎と茨の王女』『白金の王冠』（創元推理文庫）、ムーニー・Ｊｒ．『石を積むひと』（小学館文庫）、共訳書にラング編〈アンドルー・ラング世界童話集〉（東京創元社）、フィッシャー『スエズ運河を消せ――トリックで戦った男たち』（柏書房）ほか。