【推薦文】
「はるか大昔、森に育まれ、そこから平原へ出発したヒトは、気づいても、気づかなくても、心に森を抱えている。……森を走る影はヒトの心の闇かもしれない。作品に漂う緊張感が胸を打つ。その残響が、見えない梢にひろがっていく。」――蜂飼耳(詩人)
「田中孝道。たなかこうどう。……いまもっとも秘教的なイメージの探索者として評価すべき美術家のひとりである。」
「それは、底ひかる妖しげな胞子が瀰漫する、淫靡な、糜爛した、紊乱の世界である。……すべてが膿腫のように爛れているのだ。」
「ひかりはやがて影へと、色彩はいつのまにかモノロームへと移ろう。もちろんその逆も同時に進行している。すべては厳密にはあわいのなかに複数のレイアーとしてある。イメージは、いうならば、正確には、いつでも浮きつ沈みつしているのだ。」
「田中孝道は、その浮沈を賭けて、一瞬の減少としてのイメージを繊細かぎりない手つきで優しく捕獲する。根源から/根源へ(あるいは、根源へ/根源から)流動する様相そのままに。」――水沢勉(神奈川県立近代美術館長)
【内容】
森の残響 蜂飼耳
第1章 漂える森へ
第2章 黙劇
第3章 窯変
第4章 蘖の歌
第5章 ドローイング
補遺メモ
根源へ/根源から イメージの浮沈を賭けて 田中孝道について 水沢 勉
1946年山梨県生まれ。
著書に2010年『多肉植物園』『漂える森へ』(以上、