どんでん返しと鮮やかなロジックが冴える傑作10編
三度笠を被り長い楊枝をくわえた姿で、無宿渡世の旅を続ける木枯し紋次郎。己の腕だけを頼りに、人との関わりを避けて孤独に生きる紋次郎だが、否応なしに旅先で事件に巻き込まれてゆく。兄弟分の身代わりとして島送りになった紋次郎が、ある噂を聞きつけ島抜けして事の真相を追う「赦免花は散った」。瀕死の老商人の依頼で家出した息子を捜す「流れ舟は帰らず」。脱走した女郎たちとの逃避行の意外な顛末を綴る「笛が流れた雁坂峠」。ミステリと時代小説、両ジャンルにおける名手が描く、凄腕の旅人にして名探偵が活躍する珠玉の10編を収録。
【収録作】
「赦免花は散った」
「流れ舟は帰らず」
「女人講の闇を裂く」
「大江戸の夜を走れ」
「笛が流れた雁坂峠」
「霧雨に二度哭いた」
「鬼が一匹関わった」
「旅立ちは三日後に」
「桜が隠す嘘二つ」
「明日も無宿の次男坊」
編者解説=末國善己
1930年東京府生まれ。60年『招かれざる客』