そのたま! その銃弾が、確かにセカイを変えたのだ

· 犬吠埼一介
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 僕たちは、本当にセカイを変えることはできないのだろうか?
舞台は海べりの小国、エルメデ。この港湾国家では、人々が漁獲された魚や蟹を
缶詰に加工して輸出する幅広い産業に従事して慎ましくも豊かに暮らしていた。

愛すべき日常。誰もが気分よく働き、彼ら自身の労働を称える勇ましい歌で街は
満ちていた。だがそんなある日。港湾労働組合の第三課……労働者たちに紛れて、
平和な日常を維持監視する任務を持つニコルは、微かな異変を感じる。エルメデ
において、まさに今、誰かが日常を侵害しているのだ。そんな、ここはエルメデ
だぞ?! だが彼はすぐに知ることになる。周到に張り巡らされた革命という罠が、
すでに避けがたい形で炸裂し、街を覆うことになるからだ。

そして、ニコルは、レシカに出会う。

彼女は労働者の街であるエルメデにはまるで似つかわしくないような美女だった。
彼女は、ビルドの女だ。ビルドとは、エルメデの平穏を脅かす悪党……街を統治
するアーキテクトたちへの憎しみと叛意をつのらせている「プロレタリアート」だ。
日ごとレールを通って山の上の統治区画へと向かうアーキテクト専用の高架鉄道を、
燃える双眸で凝視するビルド。そんな彼を、レシカは慕っていた。生まれてこの
かた、ずっと続いてきた日常。その退屈さを疎んじていたためである。

ここに、ひとつの戦いが生じる。

エルメデの街を騒乱が包み込む。火の粉が舞う。ビルドとニコルの視線が交錯し
燃え上がる。ニコルは思うのだ。この愛すべき日常をビルドなどには渡さないと。
そして彼女もだ。レシカもまた、奴などには相応しくない。自分こそがエルメデ
の日常を守り抜く。レシカをビルドから奪ってみせる!

果たして、女を賭けた、港湾国家の趨勢を賭けた、男同士の戦いはいかに?!

犬吠埼ナイン構想のなかでも異彩を放つ作品です。痛みを、悲しみを、涙すらも
乗り越えて、なおも守られるものがあるとき、それは人々にとってどれほど大切
なものなのでしょうか。日々を生きるうえで、あるいは創作するうえで、まさに
僕はそのことを思い出します。辛いときに、悲しいときに、やりきれないときに、
それでもなお、彼らが守ろうとしたものが何だったかを思うとき、僕はまさしく
悠久の旅路に接続され、たどり着いたサーガの果てへと至ることができるのです。

小説:犬吠埼一介
イラスト:芳村拓哉

界隈で話題になっている、九作品の中編小説からなる「犬吠埼ナイン構想」という
サーガの三番目の章作品です。この作品から読み始めても問題なくお楽しみいただ
くことができます。オフィシャルサイトでもさらに詳細なご紹介を掲載しています。

犬吠埼一介のホームページ: http://inubousaki-ikkai.kir.jp/
電子書籍普及委員会(電書会) 公式サイト: http://inubousaki-ikkai.kir.jp/denshokai/
奥付に記載のとおりWeb再録本となります。電書会の公式サイトでも作品を無償で
掲載しています。mobiとepubとPDFファイルをダウンロードし各種端末に転送して
いただくこともできますので、お気軽に電書会レーベル作品をお楽しみいただけます。
女性声優さんによる高いクオリティのボイスドラマ風朗読版も無償で掲載しています。

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