ふりがな付きで、約14万字を収録。
<あらすじ>
主人公の「僕」は、何も積み重ねていない単なる健康マニアな30代。
その「僕」の日課といえば、アパート裏手にある神社、そこでの体操や階段の上り下りだった。
また、神社では「健康と美容」を奉っており、近所のおばさん達の人気スポットとなっていた。
そんなある日、「僕」がいつものように境内空き地で体操を行っていると、突然自らの身体が落下してしまう。
気付けば、大きな落とし穴に落ち込んでしまっていた。
足を擦りながら回りを確認すると、そばに女性の死体が横たわっている。
しかもその死体には、奇妙な膜が全身隈無く張っており、シワが幾十にも刻まれていた。
「怖いし、とりあえず穴から脱出しよう」
そう思った「僕」は、穴から這い上がり、神社内に存在している「お清めの水」を死体へ捲き、その場を後にする。
がしかし、「僕」はどうにも気になっていた。
「あの死体、本物なんだろうか? 健康の反対、腐るってなんだ? それに、僕の指紋がべったり付着いているかもしれない」
あの奇妙な死体へ取り憑かれてしまったかのように、「僕」は迷走を始める。
「もう一度、あの穴へ戻らなければ」
警備のアルバイトなど手に付かず、穴のことばかり考えてしまう。
そして遂に、塞いだはずの大きな垂直へ戻り、さまざま確認することに。
「この死体を覆っている膜は、いったい何なのだろう?」
膜を破ってみると、そこには、
若返っているであろう美麗な肌が存在した。
「なんで? この死体はおばさんだと思っていたのに……」
膜をすべて取り終わると、前回見た姿とはうって変わった、若い女性の死体が露わとなる。
「ああもしかして、これって若返っているのか?」
「だったら僕も、あの水をかぶってこの穴にいれば、若返るのでは?」
主人公は、決意した。
この穴蔵で生活することを。
そして、うだつの上がらない人生からの、再生を願っていた。
様々な仕事に従事し、気が付けば「どインディー真っただ中。