異国船との接触をことさら問題にし、陽明学徒をつけ狙う〔林家の筋〕とは、果たして何者か。遠山楽土によれば、幕府昌平坂学問所の林大学頭ではなさそうな感じがあり、水野忠邦の言質からは、抜け荷事件を追及されている老中松平周防守の意を汲んでいるようにも推測される。だとすればすでに隠匿してある〔青風鳥〕を取引材料として小次郞宥免に持ち込めるのではないか、と与一郎はかんがえていた。そこに寺社奉行配下の川路弥吉(聖謨)から周防守追及の協力の申し入れがあるが、青風鳥隠匿を知る間宮林蔵から事情を聞いたらしいが、小次郞宥免の切り札をそうそうてばなすわけにはいかない。一方、城地改修工事にまぎれて小次郞救出を目論む奥山左十郎は、佐賀藩の守備隊に取り囲まれて万事休す。投降を願う小次郞との対決を余儀なくされてしまうが、果たしてその結果は……。はたま与一郎の小次郞宥免の秘策は成就するのだろうか。電子本だけで読める好評与一郎シリーズ第六弾下巻。
著者略歴 1944年台湾生まれ、東京育ち。スチールカメラマン、