蝶と僕

· うだりお
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誰にだってあるでしょ? 言いたくても言えないこと。大切な人だからこそ、言えないこと。


6月のある日、静岡に住む叔母から段ボール箱が届いた。箱を開けると、中には丸々と太った沢山の夏みかんと小枝についたアゲハ蝶の蛹。その蛹を見て、麻央は幼少の頃に蛹で遊んでいたことを思い出す。用水路をすいすいと流れていく蛹、怖かった叔母、優しかった母――麻央は母の秘密を知ってしまって以来、今の母がどうしても好きになれないでいた。そんな折、叔母から従兄弟の恭正の大学見学に付き合ってほしいと頼まれる。静岡からやってきた恭正の東京見聞に付き合う麻央だったが、次第に彼が本当は大学を見に東京へ来たわけではないのではないかと疑い出す。恭正は何をしに東京へやってきたのか。短編四作目となる本作は、新古の考え方が混じり合う現代に生きる親子の話。

著者について

1977年、栃木県生まれ。17歳の時にイギリスへ留学したことを機に日本の外に興味を持つ。高校卒業後に渡米。カリフォルニア州立大学・大学院にて、7年間、機械工学を勉強する。帰国後、3年間、民間企業でエンジニアとして働いた後、執筆活動に入る。主な作品に、盈月をとる、枠、ジンセイイチド等。

日本社会の生き辛さをテーマに、身近に起こり得る問題を小説という形に落とし込む現代小説家。周囲に対してあと少しだけ寛容な社会、個人の在り方が尊重され各々が自信を持って行動できる社会、そして頑張っている人が報われる社会、そういう社会に近づくように。少しずつ。一歩ずつ。

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