楽園に一番近いはずのこの船で、あなたが見ていたのは地獄だったの?
――「無垢なる花たちのためのユートピア」より
歌集『Lilith』で話題の著者、初の小説集
舷(ふなばた)から墜ちていった少年の名は、白菫(しろすみれ)といった。船は純真無垢な少年たちと智慧ある導師を乗せ、楽園を目指して天空の旅をしていた。かれの墜落死は不運な事故とされた。この希望に溢れた船上に、みずから身を投げる理由などあるはずがなかったから。けれど、親友の矢車菊(やぐるまぎく)には気がかりなことがあった……。幻想文学の新鋭による初の小説集。
【目次】
無垢なる花たちのためのユートピア
白昼夢通信
人形街
最果ての実り
いつか明ける夜を
卒業の終わり
解説=石井千湖
1991年神奈川県生まれ。