あらすじ
主人公「私」は、長年趣味でチェロを弾いてきた。妻もバイオリンをやっている。
私たちは、あるアマチュア・オーケストラでマーラーの交響曲を弾くことになる。私がレッスンを受けてきた先生がこのオーケストラで、ラロのチェロ協奏曲の独奏をすることがきっかけである。そしてプログラムのもう一曲がマーラーの交響曲第五番であった。この難曲を妻ともども懸命に練習する。しかし、私たちにとってこの曲は難しすぎる。それは私のやる気をすっかり無くしてしまうほどで、チェロそのものをやめたくなってしまう。
七十四歳の私と六十九歳の妻がなおもチェロやバイオリンを弾き続け、難しい曲に取り組むことの意味を話し合う。二人は、誰のためでもなく、自分自身のためと考えることで、苦痛でしかないようなこうした難曲の練習からも喜びを得ることができることに気付く。また楽器の演奏をやめるのは、急がなくてもそのときは向こうからやって来る。それまでは続けようと考えることにして何とか本番までこぎつける。
著者紹介 ー1939年~2021年ー
著者プロフィール(2020年5月)より
「名古屋生れ、広島大学卒。小学校の教員暦七年、
書くものとしては文学的なものから推理もの、歴史もの、
ライフワークとしたい目標は、