ブッカー賞、オレンジ賞最終候補作。
この世の誰にも、時をさかのぼることなどできはしない。だがもしも、あの時に戻れたなら……。1944年、ロンドン。夜ごと空襲の恐怖にさらされながら、女たちと男たちは不穏な日々の暮らしに、必死でしがみついていた。荒れ果てた都会の廃墟で、深夜の路上で、そして刑務所の中で、人々の運命はすれ違い、交錯する。戦争を背景にしたこの群像劇で描かれるのは、赤裸々にさらけ出される人間の生と業。ますます冴えわたるウォーターズの筆は、人生の真実をためらうことなく活写する。/解説=若島正
【サラ・ウォーターズ】
1966年に英国のウェールズに生まれ、ロンドンで育つ。
【中村有希】
1968年生まれ。東京外国語大学卒業。英米文学翻訳家。