源氏物語(二十五) 蛍(ほたる)

·
· パンローリング
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与謝野晶子による現代語訳を朗読しオーディオ化しました。

多様な人物たちの織り成す複雑な心理描写を、分かりやすく情感豊かに読み上げました。
またそれぞれの帖の冒頭では翻訳者の与謝野晶子が、その帖の内容を一首の歌にして見事に表現しています。

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源氏物語は、紫式部によって書かれた全五十四帖から成る長編小説。

期間にして74年、四代の天皇の御代に渡る壮大な物語であり、
その文章の構成や美しさ、人物の心理描写の面などからも、
日本の文学史上最古にして最高傑作とも言われています。

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源氏物語 第二十五帖 蛍(ほたる)

光源氏から恋心を告げられた玉鬘(たまかずら)は悩ましい日々を送っていた。源氏も人目をはばかってそれ以上言い寄ることはしないが、しばしば玉鬘を訪ねてくるのだった。

そんななか、蛍兵部卿宮(ほたるひょうぶきょうのみや)は相変わらず熱心に玉鬘に恋文を送ってくる。源氏は一計を案じ、蛍兵部卿宮が玉鬘のところへ訪ねてくるようにしむけ、彼が玉鬘と几帳ごしに対面しているときに、袋にいれて隠しておいた蛍を解き放った。暗闇にいっせいに飛び交う蛍の光が玉鬘を照らす。蛍兵部卿宮は美しい玉鬘にますます夢中になってゆく。

端午の節句になった。源氏はこのときも玉鬘を訪ね、それから華やかな催しに参加する。そのまま催しが行われた花散里(はなちるさと)のところに身を寄せた源氏は、花散里と仲むつまじく語り合うが、別々の寝床に眠るのであった。

梅雨が長く続くころ、六条院の女君や女房たちは絵物語を写したり読んだりして退屈をまぎらわせていた。玉鬘もさまざまな物語を読み、自分の数奇な運命をあらためてかえりみる。源氏はそこへやって来て、物語の批評をしながらも巧妙に玉鬘に言い寄るのであった。

紫の上も明石の姫君のために絵物語を取り寄せていた。源氏は、明石の姫君の教育によくないと思われる物語は見せないようにと紫の上に注意し、万事につけて明石の姫君に心を配っていた。

過去に起きた過ちを繰り返さぬために、源氏は息子・夕霧(ゆうぎり)を紫の上に近づけないようにしているが、明石の姫君とは兄妹の間柄なので、遠ざけることをしなかった。明石の姫君の遊び相手をする夕霧は、しきりに幼なじみの恋人・雲居の雁(くもいのかり)のことを思いだし煩悶するが、立身出世するまではと思い、わずかな手紙のやりとりで我慢していた。

内大臣にはいくにんも子どもがあって、それぞれ適した地位についていたが、娘は二人しかおらず、しかも一人は后の競争に負けた弘徽殿女御(こきでんのにょご)、もう一人は知らぬまに夕霧と関係をもっていた雲居の雁であるから、内大臣は残念に思っていた。そして、行方不明になった夕顔の一人娘のことを思い出し、名乗り出てきてほしいと願う。「長い間忘れていた子が、人の子になっている」という夢占いが出た内大臣は息子たちにもその話をし、娘の行方を気にかけるのであった。

作者:紫式部(むらさきしきぶ)

平安時代中期の女性作家、歌人。
中古三十六歌仙、女房三十六歌仙の一人。
父は越後守・藤原為時。母は摂津守・藤原為信女。
夫である藤原宣孝の死後、召し出されて一条天皇の
中宮であった藤原彰子に仕えている間に『源氏物語』を記した。

現代語訳:与謝野晶子(よさの・あきこ)

作家、歌人。大阪府堺市生まれ。旧姓は鳳(ほう)。本名「志よう」。
幼少時から文学や古典に親しみ、10代半ばで和歌を投稿するようになる。
歌人・与謝野鉄幹が創立した新詩社の機関誌「明星」に歌を発表。
鉄幹と恋仲となり鉄幹とともに上京し、処女歌集「みだれ髪」を刊行。
のち鉄幹と結婚し、「小扇」「舞姫」「夢之華」などの歌集を刊行し、
女流歌人としての名声を確立。その他作品には、
「君死にたまうことなかれ」「常夏」「佐保姫」「春泥集」「青海波」
「夏より秋へ」「朱葉集」「火の鳥」「太陽と薔薇」などがある。

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