アダム・スミスとリカードによる生産性向上の議論は、テイラーの科学的管理法、さらにはデミングのTQCへとつながった。マネジメントは時間、原材料、資本などの無駄の排除を目指し、効率は美徳とされた。しかし、筆者は高度な効率化に警鐘を鳴らす。効率が向上するにつれて効率化の恩恵が不均等に配分されるようになり、専門特化が進み、最も効率的な企業の市場支配力が強まりゆく一方だからである。そして格差が生まれ、社会不安の種も生まれるというのだ。これを正すためには、一般的には競争優位の源泉と考えられていない「レジリエンス」を重視し、獲得することだと主張する。困難から立ち直る力であるレジリエンスにより、長期的には安定した公平な事業環境が生まれるだろう。
*『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(2019年11月号)』に掲載された記事を電子書籍化したものです。