『弁護側の証人』『血の季節』の小泉喜美子の真骨頂!
温室での洋蘭の栽培に全身全霊を捧げる美しい義姉。彼女が育てる人面花を巡る悲劇と戦慄の真相を描いた表題作ほか、花・星・蟲・鳥を題材として、幽玄の世界のうちに技巧を尽くした傑作ミステリ短篇集『月下の蘭』。かつて公安警察の鬼と呼ばれた盲目の老人と、彼の愛娘が伴った謎の客との会話が思わぬ過去を暴き出す「夜のジャスミン」ほか、男女の愛憎を中心に据え、鮮やかなツイストで読者を唸らせる『殺人はちょっと面倒』。幻の2冊を合本にて贈る。『血の季節』『弁護側の証人』など大胆な仕掛けで世を驚倒せしめた著者が、歌舞伎、能楽などの古典芸能をモチーフとした8篇を収録。
【収録作】
『月下の蘭』
「月下の蘭――春は花」
「残酷なオルフェ――夏は星」
「宵闇の彼方より――秋は蟲」
「ロドルフ大公の恋人――冬は鳥」
『殺人はちょっと面倒』
「ラヴ・ホテル〈瀧〉にて」
「殺人はちょっと面倒」
「夜のジャスミン」
「空白の研究 A Study in Blank」
『月下の蘭』初刊本あとがき
編者解題=日下三蔵