1964年、東海道新幹線開通、首都高速道路完成。戦後最大のスペクタクルの中、東京五輪は始まる。
一万メートル競技に六位入賞を果たした円谷は、最終日、国家の威信をかけたマラソン競技でも、デッド・ヒートの末、三位でのゴール・イン!
不遇に喘いでいた日本陸上界戦後初めて、競技場に日の丸を飾る快挙を果たし、国家総出の一大イベントの終幕を飾ったのであった。
賞賛の嵐の中、次のメキシコ五輪では、王者アべべの打倒を宣言する円谷。
だが、持病の椎間板ヘルニアは長年の過度な練習により身体を着実に蝕んでおり、また、一躍日本の英雄となった五輪後の多忙な生活は練習不足を引き起こす。円谷の走りは、膨れ上がった大衆の期待を裏切り続けるものとなっていた……
後世に残る偉業を成し遂げながらも、不遇の人生を送った“栄光なき”天才たち。彼らの人生は、如何なるものだったのだろうか——森田信吾による異色の偉人伝!