一方、厳しい私物規制がある中で、日本兵は家族の写真や手紙、日記帳などを携帯し、敵との遭遇戦に挑んでいる。日本兵にとり日記は、自己が生存している証であり、戦場の怒りや悲しみを整序できるものであった。日本兵日記は、多くは戦場で廃棄され、わずかなものが英訳され米国に残されたが、陽の目を見ることは少なかった。今回硫黄島や沖縄戦で英訳された約30人の日記を収集し、日本語に反訳したものが本書である。
併せて沖縄戦に参戦した米軍兵士およびヒストリアンの日記も掲載した。日米兵士を問わず日記は、文字通り「生の叫び」であり、生命の危機を実体験したものだけに可能な戦場証言である。敵味方が対峙し、敵の命を取ることに血眼な状況下、人は何に思いを致し、生をまなざしたかをあらためて感得したいものだ。
1949 年 北海道生まれ
1974 年 東洋大学社会学部応用社会学科卒業
1976 年 東洋大学大学院社会学修士課程修了
琉球大学法文学部講師、助教授、教授を歴任
現在、沖縄戦関係を中心とした翻訳業に従事